88. 食べ方にも好みがある (1999.5.15)

私は、子供の頃、大変な偏食だったが、今では、好き嫌いなく、何でも食べる。
偏食が治ったのは、短大で寮生活をしたおかげだ。
「この寮は、建物は古いし、設備も最新ではないが、料理だけはうまい」と、寮長先生の挨拶があった。
その言葉は正しく、料理はうまい。
嫌いなメニューにも、おそるおそる箸をつけたら、これもうまい。
やはり、実家にいた頃は、わがままだったのだ。

分析の結果、食べ方には、2通りの好みがあることが判明した。

母は、中華料理のように、料理がたくさん並ぶのが好きだ。
どれから食べようかしら、と迷う瞬間が楽しい。
ケーキ食べ放題などは、聞いただけでワクワクしている。

反対に父は、懐石料理のように一品ずつ出てくるのが好きだ。
父に似てしまった私も、一品ずつ出てくる方を好む。

懐石料理やフランス料理のフルコースは、食べ終わった頃合いを見計らって食器を下げ、次の料理を持ってくる。熱いものは熱いうちに食べ、冷たいものは、冷たいうちに食べる。
これが本当の味わい方だとうんちくを述べたら、スタッフ君は「それは違う」と言い張る。

スタッフ君の場合、食べる速度が早く、食べてるそばから、どんどん料理が来ないと頭にくるのだそうだ。
なぜか、間があくと、食べる気力がなくなってしまうそうで、一度にガーっと持ってきてほしいと言う。
そして、その分量を見計らいながら、食べていく。なんともあわただしい。

さて、気仙沼から東京に戻る途中、仙台駅で「こばやしの牛たん弁当(1000円)」を買うことにしている。
これは、弁当としては非常にシンプルで、麦飯の上に「牛たん炭焼き」を数枚乗せた(だけ)。あとは漬物がついている(だけ)。

どこがいいかというと、この弁当には紐がついていて、それをひっぱると突然、熱し始める。
7〜8分たってから、ふたを開ける。アッツアツの弁当が食べられる。牛たんも柔らかくて、食べ頃だ。
熱いものは、熱いうちに食べる、という私の好みと合致している。シンプルな点もよい。

しかし、おそらく母の性格では、「え〜、これだけなのぉ〜」と言うに違いない。
やはり好みは難しい。