その昔、私はミュージシャンを目指した。
甘かった。結局、今は、ただの変なおばさんだ。
引っ越しを重ねるうちに、音楽機材のほとんどを、売ってしまった。
フェンダー・ローズステージ、YAMAHAのDX7、コルグのM1、E-muのピアノ音源、E-muのPROTEUS1、2、う〜〜む名器がそろっていた。
ミキサーは、AKAIの1212、エフェクターもデジタル・リヴァーブ、デジタル・ディレイ、他多数。
しかし今あるのは、YAMAHAのKX88というMIDIボード。これは、ピアノタッチな鍵盤が良いし、88鍵ある。音源は、ローランドのサウンドキャンパス(初代)と、JV-2080、これだけだ。
それさえも昨年の7月の引っ越しの後は、いくつかの段ボールとともに、放置され埃をかぶっていた。
再び音楽の火が灯るには、いくつかの要因がある。
まずは、気仙沼でのアマチュア・ミュージシャンの宴席だ。ここで「私もやらなきゃ」と、なぜだかそういう気になる。ここがスタート地点だね。
次に、iMacの登場だ。と言っても、iMacを買ったわけではないし、買う予定もない。
シリアルポートなしのMacを見て、「いったいMIDIは、どうなるんじゃい」と興味を持つ。MIDIは、シリアルポートに接続する。なのにiMacにはシリアルポートがない。かわりにUSBポートがついている。ということは............。その動向に注目せずにはいられない。
そして、3つ目は、ガッちゃんの来訪だ。
ガッちゃんは高校生で、「音楽をやるぜぃ!」の現役世代だ。
そのガッちゃんに、「DTMを教えてくれ」と言われれば、こちらもムキになることは、火を見るよりも明らかだ。
ガッちゃんが来る前夜、私は、大慌てでセッティングをする。
せっかく、訪ねてくれるのに、音が出なくては、情けない。
引っ越しの段ボールから、ケーブルを出しては、セッセと接続し、SE/30を起動し、Performer5.02をダブルクリックし、息をのむ。
うむ、とりあえず動いたな。
おもむろに鍵盤をたたく。
案の定というか、すぐには音は出ない。ま、そんなもんだ。いくつかの設定をする。
う、まだ、出ない。
こんな時は、い〜つ〜も〜、「やっぱり!」MIDIケーブルの「inとout」が逆になっているのを発見。
差し替えて、鍵盤をたたく。
「ボォ〜〜♪」っと音が出た!(拍手そして涙)。
SE/30の動きは快適で、「どうだ〜、俺だって、まだまだいけるぜぃ」と胸をはる。
鍵盤に向かって、昔とった杵柄を奏でる。
ワ〜イ、ワ〜イ! また音楽をやろう!
今度は、もっと楽しんでやろう〜。
翌日の会議の席で、「オヤマさん、なんだか明るいですね」と言われたのでした。