内職。
刑事ドラマなんかにあるよね。
亭主が飲んだくれて一銭も家に金を入れないから、女房が髪を振り乱しながら、封筒貼りをする。幼い子供が、かあちゃんの手伝いをする。乳飲み子は泣いている。六畳一間のボロアパート。指名手配中の女房の役がこれをやる。
どうにも幸福がめぐってこない感じが出ていて、「ああ、運命ってのは不公平だわ」と、こっちもジワーっとくる。
というわけで(って、上記とは全く関係ないが)、内職を始めた。
指定された時間に行くと、「だんなは、どうしているか?」「子供は小さいのか」「外で働けない理由は?」と質問された。
飲んだくれの亭主もいないし、子供もいない。外で働けない理由は、採用されないだけ、とは言えない。
「バンドの練習があって、時間が不定期」などと、もっともらしい事を言う。あながちはずれているわけでもない。
「ひょっとして、内職からも不採用?」とビビる私に、
「子供がいないなら、小さい部品でも大丈夫だね」と言う。ホッ。採用にはなるらしい。
内職=封筒貼り だと思っていたが、今や主流はハイテクに移っていた。
袋いっぱいにもらったのは、自動車の部品。自動車の部品は、すべて機械化されているのかと思ったら、どうしても、手作業が必要な箇所があるそうだ。接着剤で、部品と部品を張りつける。それがライトになる。豆電球より、もっと小さいもので、うまく接着されると電気がつく。
詳細は忘れたが、それが1個何銭って計算だ。ちゃんと接着されないと、ライトがつかず「不良」となる。不良分の賃金は支払われない。完全、出来高払い。
私は、仕事が出来る喜びに、スキップしながら家路についた。
わぁ〜い、これでやっと仕事が出来る。