うちのスタッフが「iMacとプリンターを買う」というので、私も雑誌やインターネットを見ては、「これがいい、あれがいい」と余計なお世話的アドバイスをしている。
彼女にとっての初代パソコンなのだ。なんだか、こっちも嬉しい。
私が初めてパソコンを買ったのは、MacintoshのSE/30という機種だ。「サンジュウ」って略したり、「サーティ」なんて英語読みしたりする。
そのパソコンは、50万円以上した。それでも発売当時は80万円近くしたものが、次の製品が出たおかげで、値崩れし、買い時だった。
その頃の収入を考えると、とんでもなく高い買い物である。なぜ、買う決意をしたか、今となっては、確実な記憶はないのだが、「これを買わなければ、明日はない」くらいに思いつめていたのは事実だ。
まずは、秋葉原詣でとあいなった。
今ほど、「Mac」の知名度がなく、表通りの店には、Apple製品は置いていなかった。
雑誌の広告にある「地図」をにぎりしめて、店を探しに行くのだが、予想以上に裏通りにあるし、狭い店内に一歩踏み込むのは勇気がいった。
当時の私には、パソコンの知識がない。
メモリが4MBで、HDは40MBと貼り紙があっても、その意味がわからない。
「え??? メモリって何?」「エッチディーって何???」ってな具合だ。
意味もわからず大枚はたくわけにはいかないので、とりあえず帰り、その意味を調べる。やっと意味がわかると、また秋葉原に行く。
次の問題点は、新製品であるIIsiやLCを買うか、前のモデルであるSE/30にするか、悩む。
「用途は音楽制作です」なんて一人前の口をきいたりするが、実際のところ、店員さんの言葉の半分以上が、理解できない。「CPUが違いますからね〜」「はぁ〜〜、しーぴーyou?」なんて具合だ。
わからないのは悔しいから、また帰って調べる。
買うまでにおおよそ2カ月間、秋葉原と世田谷のアパートを往復した。
そして、出した結論は、SE/30にメモリは8MBで、内蔵HDは100MBだ。ゴージャス!
「コプロセッサがついてるしね〜」などと知った口をきいたりして、嬉しくなったものだ。
当時の標準は「メモリが2MBで、内蔵HDは20MB」程度だから、標準の何倍もする装備は、初心者のくせに思い切ったものだ。
その日曜もあれこれ回って、買った時には、日が落ちていた。
「宅急便で送りますか?」と聞かれたが、どうしても持ち帰りたくて、キャリングバッグを買い、それに詰めてもらい、タクシーでSE/30をだっこして帰った。
総額65万円の買い物だ。店員さん2人がタクシーまで送ってくれた。
タクシーの中では、メーターが上がるたびに心臓がドキドキとなる。
「ヒィ〜、もうお金ありませんよぉ〜〜。ド・ド・どうしよう?(汗)ここから歩こうか?」と真剣に思ったあたりで到着。ヤレヤレ。
それが私の初代パソコン。もちろん、その日は、明け方までMacと遊んだのは、いうまでもありません。
1台のパソコンを買うのに2カ月かかり、いろいろ調べ、安いと言われる店を何軒も歩いた。
近ごろは、20万円代のパソコンを「高い」といって買うのを渋っているが、あの当時のエネルギーはいったいどこから来たのだろう?