195. 本格派・気仙沼弁---39 <わがんね> (2000.11.14)

前回、「身体に気付けなくて、わがんねよ」と書いた。
(身体に気を付けないといけませんよ)という意味。

「これっサ、人に迷惑をかげでは・わがんねよ」(これこれ、人に迷惑をかけてはいけませんよ)
と耳にタコができるほど聞いた。

「人に迷惑をかける事はいけない事」ときかされた我々世代は、「人を殺してなぜ悪い?」の質問にあっけにとられ、咄嗟には返す言葉を失う。
「そんなごど、決まってるっちゃね〜」と論理的な説明にならずに四苦八苦する。

小さな頃に「やってわがんね(やってはいけない)」と言われた事は、大きくなっても「いけない事」として心の片隅に生き続ける。だから「人を殺すのがなぜ悪いか?」ということは理屈ではなく、身体に染み込んでいるのだ。
逆にそうでない若者が増えていることに驚きを隠せない。
理屈ではなく幼児期にたたきこむべきことも必要なのではないだろうか。

さて20余年前、娘を東京に出すにあたって父は「これだけは言っておきたい」といつになく真剣だ。
「これリッコや、新宿の歌舞伎町という所さ行ってわがんねゾ」
「東京どいう所は“生き馬の目を抜くこわ〜い所”だ。歌舞伎町はその中でも、一番恐い所なのっさ。ほんだがら絶対に足を踏み入れてはわがんねゾ!」
「はいッ!」と娘は素直に返事する。

ああ、それなのに、その4月には歓迎コンパなるものがあり、女子寮の田舎っぺ達は、そろって歌舞伎町にくり出したのであ〜る。

「危ねぇどごさ、行ってわがんね」(危ないところへ行ってはいけない)と言われれば言われるほど、若者の好奇心が顔を出すのは、今も昔も変わらないのっサ。

「わがんね」は「わからない」の意味にも使う。
「数学はサッパリわがんねオン」
「英語もわがんねし」
「ほんで、はっぱ、ダメだっちゃ」(さっぱりダメじゃない)

「はっぱ」は、「さっぱり」という意味で、「葉っぱ」のことではないんだね。
「はっぱ・かげで」というのもある。これは「はっぱ64」ではないのっサ(笑)
「気合いを入れて」という意味。
これは広辞苑に「発破を掛ける」と出ている。それがなまったものらしい。
「はっぱ(さっぱり)進まねっちゃ。はっぱかげで(気合いを入れて)ヤレ」(難しい?)

仕事は、はっぱ・ハガいがね・ねぇ〜
ほんでね。

つづく...