赤坂見附から丸の内線に乗り、終点の荻窪で降りる。
南口に出るとバス停があり、「荻窪団地行き」のバスに乗る。
終点「荻窪団地」で降りる。
そこから歩いて5分のところに女子大の寮がある。
東京といっても銀座と築地しか知らない父と、東京なんて何十年ぶりという母と、中学の修学旅行と受験と今度で3度目の私の3人が、地図を握りしめながらこの道のりを進んだ。
平日昼の丸の内線はすいている。
新宿を過ぎるとドンドン減っていく。
「おい、大丈夫が?」と父が言う。
残り2人は無言。心細さでいっぱいだ。
荻窪で降りると「こっちだ」という父に従い、バス停に並ぶ。
気仙沼でも滅多にバスに乗らない父が、バスの秩序に従って席に着く。
走り出した時は満員に近い客が、ドンドン降りる。私達は終点まで向かう。
そのうちに畑がチラリと見える。
「オ〜、お母さん、みろや。はだげ(畑)だぞ」と父。
「あれ〜、ほんだ〜」と母。
「やっぱ、荻窪はいなが(田舎)だな〜」
「あ、まだ、はだげ(畑)だ」「あ、まだある」と父と母の声が大きい。
立て続けに畑が見えてきて、両親の声がかなり大きくなった頃に終点についた。
実家は気仙沼の町なかにあり、まわりに畑がない。
畑=田舎だと思っている私は、魚町よりも不便なところに来てしまった後悔がふつふつと湧いてくる。
こんなことなら、宮城学院(仙台で有名な女子大)に行くべきだったなぁ。
その後、間もなく、荻窪は田舎どころか閑静な住宅街だということに気づくわけだが。